|
一艘の船がアイアイエ島に着いた。この島には、太陽神ヘリオスと、海の娘ペルセの子で、アイエテスの娘
が住んでいた。
彼女はキルケと呼ばれ、この島にすばらしい宮殿を構えていた。 船の乗り組み員たちは、長い航海で疲れ果てていたため、島に上がった安堵感と張り詰めた気のゆるみから、
そのまま海岸の草むらに寝ころんだ。
三日目の朝、船乗りは剣と槍で武装し、島の偵察に出かけた。 やがて大きな岩の陰から、女神キルケの宮殿が姿を見せた。
そっと宮殿の門に近寄ってみると、中から美しい歌声が聞こえた。 さらに中に進み、歌声の主はキルケと分かった。 キルケの歌に合わせ、女神たちが美しい織物を織っているところだった。
船乗りたちを見て、キルケは宮殿の奥へ彼等を案内した。そして、召し使いに酒と食べ物を運ばせ、皆に食べるようすすめた。
船乗りのひとり、エウリュロコスだけは食べ物を口にしなかった。 昔、或る島で女神の魔法にかけられ、ひどい目にあったことを聞かされていたからだった。 エウリュロコスは
一人でそっと、みつからないように部屋を出た。 そっと振り返った彼の目に、恐ろしい光景が展開されていた。 酒と食べ物に夢中の仲間達が、なんと、豚や鹿や狼に姿を変えていたのだった。
怖さを我慢して、しばらくその場で隠れて見ていると、キルケに命じられた召し使いが、動物たちを柵で囲まれ た動物小屋へ追い込んでいる。
エウリュロコスは、転げるように海岸へ向かった。 その途中、端正な風貌の若者に呼止められた。名をヘルメスといった。 エウリュロコスは、先刻の一部始終を、震えながら彼に話した。
「わたしの魔法で、あなたの仲間を助けてあげよう」という言葉を信じて、二人は宮殿に向かった。 実は、このヘルメスこそ、女神キルケが思いを寄せている恋人であった。再び現われた船乗りと、その仲間に変そうした男を見て、キルケは酒と食べ物を与えた。 二人は事も無く飲み食いしたが、一向に動物に姿を変えなかった。 キルケは驚き悔しがった。ヘルメスは変そうを解き、船乗りたちをもとの姿に戻すよう、キルケに言った。 さらに、「これまでのように人々に魔法を賭けるようなら、あなたをアイアイエ島から追放する」と続けて言った。間もなく、船乗りの仲間達はもとの人間の姿にもどり、再び航海に出発した。 そして、女神キルケは恋人のヘルメスと、しあわせな日々を送ったそうである。
実は、松山市内に13店鋪を展開する、メガネの「アイアイエー」店名の語源でもある。
※参考資料 グスターフ・シュグァープ著、白水舎・発行「ローマ神話・ギリシャ神話」より、筆者要約及びアレンジ
|