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「外観では判断しない」の教え

●仕事場の近くにコンビニがあり、夕飯はここの弁当で済ませていた。2〜3年も続いている。
先日、得意先の営業マンに食事に誘われ、飲食店に入った。コンビニのすぐ向かいである。 古ぼけた店構えに、使い古した暖簾が風にゆれていた。4〜5人も座ればいっぱいのカウンターと、三畳ほどのタタミ席があった。タタミには新聞、雑誌が無造作に置かれていて、店内は お世辞にも綺麗とは言えない。
店は、中年の女性が一人で切り盛りしていた。ネコが一匹、まるで店の主人のような態度で、カウンターの奥に丸まって店内を見回している。我々は、 カウンターにズラッと置かれた、惣菜の鉢から好みのものを取り皿に盛り、お互いの仕事の成功を祈って、軽くビールで乾杯した。惣菜はどれも、とびきり美味しかった。
おっとりした 女将さんの人間性も気に入った。我々の身体を気遣い、美しい笑顔でとっておきの料理をサービスしてくれた。肩をすくめ入ってきた他の客にも、応対は同じだった。支払いは割り勘に したが、その安さに顔を見合わせた。二人分払ったって、どうってことはない。
コンビニでは到底味わえない、ほのぼのと温かい気分で店を出た。冬の寒空も、普段は気になる車の往来も、 この夜だけは違っていた。肩を組んだ二人の顔がほころんでいた。

                               松山・金時おじさん

「五円」の領収書

 ●妻が昨日の折り込みチラシを、行動するたびに持ち歩いている。
夕食のとき、気になっていたそのことを聞いてみた。「あした、ミシンが”5円”じゃと!」と言いながら、 例のチラシを差し出した。松山の有名専門店の売り出しチラシであった。「中古ミシン5円。抽選で7台限り」と、あまり目立たぬ文字の大きさで、確かに書かれている。
なるほど、 妻はこのフレーズに心を奪われたのか、と納得した。次の日、妻は開店30分前に間に合うよう出かけた。2時間ほどして、重そうにミシンケースを抱え、帰宅した妻に、わたしは「よく 抽選に当たったね!」と目を丸くして叫んだ。
妻の話しでは、おおむね次のような経過だったらしい。「店頭は予想外に客は少なく、妻を含み8人だった。店から手渡された抽選券7枚は、 客の、ほぼ90パーセントに行き渡った。抽選は”阿弥陀くじ”方式である。欲を捨て、当たればラッキーの気持ちでクジを引いたのが幸いしたのか、対象の7台の内で、とびきり上等なの が当たった。
見掛けも新品と変わらず、デザインも申し分なかった。店員から領収書を手渡され、記入を求められた。たった5円の領収書は初めての経験だった。」とか。

                                東温 団塊世代
念ずれば花ひらく

●「二度とない人生だから 一輪の花にも無限の愛をそそいで ゆこう。 一羽の鳥の声にも 無心の耳をかたむけてゆこう。 二度とない人生だから 一匹のこおろぎでも ふみころさないようにこころしてゆこう。  どんなにか よろこぶことだろう」(二度とない人生だから)  詩人、坂村 真民さんが、ことの外すき だった。
訃報を聞いた時は、さすがにショックだった。「念ずれば花ひらく」の8字は「大辞典」にも載り、 日本各地は言うに及ばず、海外にも碑が建っている。ふと、生前の先生のお話を思い出す。
”タンポポ堂に一人の婦人が訪れ、「夫婦関係のもつれから、死のうと真剣に考えた時期があった。そのとき、何気なく立ち 寄った書店で、真民さんの詩を読ませていただき涙がとめどなく出た。そして、生きよう!と思った」と、輝くような明るい表情で語った。”
「念ずれば花ひらく。 苦しいとき 母がいつも口にしていた このことばを、わたしも いつのころからか  となえるようになった。 そうしてそのたび わたしの花がふしぎと ひとつひとつ ひらいていった」 「死のうと思う日はないが 生きてゆく力がなくなることがある。そんな時お寺を訪ね わたしひとり 仏陀の前に坐ってくる。力わき 明日を思う心が 出てくるまで坐ってくる」
                                松山・つゆくさ
白い、なんじゃもんじゃの花

●松山城へ登るロープウェイの横に、東雲神社がある。ここの境内に、「なんじゃもんじゃ」なる木があるらしい。
何でも、春に白い花をたわわに咲かせ、しかも、 その花ビラが十字架の形をしていることから、神社にふさわしくない木だと、ひところ伐採の危機にあったという。場所を確認し、花の咲く頃、旅のついでに立ち寄ってみた。
胸突き八丁 の神社の石段を登る途中、立派な山門があり、くぐるとすぐ左手に、その木はあった。予想していたよりも大きく威厳を漂わせていた。まるで小振りの彼岸花のような、白いはなびらを枝 一杯に、たわわに咲かせていた。
近付いて花を観察してみる。まぎれもなく十字架の形をしていた。彼岸花のように見えたのは、その十字架状の花びらが、お互いに重なりあっていたから であった。さほど香りらしきものは無いようだ。
木の傍に解説のプレートが建っている。それによると、正式には「ヒトツバタゴ」といい、松山市指定の天然記念物と記されていた。あまり 見かけない貴重な木で、その昔、人々が”どうも良くわからん木じゃ”と言うので、「なんじゃもんじゃの木」と言い伝わったらしい。境内の二基の句碑を紹介しておく。
      東雲の ほがらほがらと 初櫻  (鳴 雪)
      遠山に 日の当たりたる 枯野かな   (虚 子)
                               広島・ピースマン

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